半世紀もの長い間、インフレ経済下の成長を続けてきたため、われわれはデフレという経済現象をほんの少し前までは、歴史や教科書の中でしか知りませんでした。
すでに定着した見方ですが、いまの日本経済が抱える基本問題は構造的な三つの過剰、すなわち生産能力、雇用、負債の過剰です。その中でも生産能力過剰は投資過剰、供給過剰であり、先人の永い苦労の上に築き上げられた最適工業生産国家も、いまでは「過ぎたるは、及ばざるが如し」ということになってしまいました。昨今のわが国の状況は、七〇年前のアメリカの「大不況」にも例えられるような惨状を呈しています。
いま考えると、七〇年前の大恐慌をきっかけに世界の経済は「新しいお金」を生み出したのだと思います。
金・銀の裏付けのある免換紙幣の代わりに、当時大発展していた国民国家・政府の裏書きによる管理通貨制度のことです。
重化学工業化と電化による爆発的な生産拡大で、金本位制を守るために増やすことが難しかった通貨流通量の制約を脱して常に需要が不足しがちな経済のバランスを拡大均衡させるためには、一国内の管理通貨の増発は結果として最適なシステムであったと言えます。
しかし、いま進行中のわが国のデフレ不況は、当然のことながら七〇年前とは全く異なった要因から引き起こされた現象です。経営者的な発想で言えば、そこからの脱出にはもう一度「新しいお金」を探す必要があるのではないかと思うのです。
これからの新しい「お金」を考えるに際し、歴史を学んでみることにします。